夜に泳ぐ魚

夜にしか着想されない思考がある。

夜にしか補足できない感情がある。

真黒い闇が辺りを覆い

内と外との境界線は正確さを失う。

灰色の脳細胞は自身を隈なく点検し始め

見えなかった昨日に評価を下し

糖分の多い幻想に点数を付与し

遠くに光る刺激物を求めて

此処を次第に離れていく。

夜は観念魚の棲み処

今日もお出ましのようである。

彼らはスイーっと私の目の前を泳いでいく。

優雅にひれを動かして縦横無尽に進んでいく。

その姿は実に饒舌である。

陽の下では消費しきれなかったエネルギーをまき散らしながら。

陽の下では許されなかった愛をエサにして。

私はただそれを見る。

捕まえることも食べることもしない。

その魚を覚えておこうか悩む程度だ。